平成23年11月に入り、まるもりは今年はもうあきらめモードに入っていました。正直、N女史のU市での営業はほとんどされていないのではないかというのがまるもりの見立てでした。年末~年明けにかけて来年にむけて独自で営業をかける方向で考え始めていたときです。
それは平成23年11月14日の事でした。仕事を終えて携帯を見るとN女史からの着信がありました。まるもりは何の気なしにN女史に電話を折り返しました。
「もしもし、まるもりですが.....。」
「もしもし、Nです。大変なことになりました。今日、Sさん(アパートの除草とかしてくれた業者さん)が105号室に入ったからって連絡がありました。」
まるもりはN女史が一体何をいっているのかよくわかりませんでした。
「それってどういうこと?」
「勝手にSさんが105号に入ってしまったんです。」
「なんで? 大体、賃貸契約もしてないよ? なんで契約書も作ってなくて、敷金も、家賃も払ってもらってないのに勝手にはいられちゃうの?」
「いや。それは.....。知り合いの方を紹介してくれって話をしていて....。紹介してくれたら、広告料として2か月払うからって話をしていて....。」
広告料2か月?? そんな話勝手にしてたの??
「これって、契約書なければ不法占拠でしょ?どうするのよ?」
「まるもりさんには2か月分の70000円をSさんに振り込んでもらいたいんです。」
「ちょっとまってよ。なんでそんな勝手な話になるの? そんな話なにも聞いてないじゃないですか?」
もう話がめちゃくちゃです。
「わかりましたNさん。ともかく、契約書は早急に交わさせてください。契約書なし、前家賃も敷金もなし、契約者の身分証明書も何もないのに勝手に入居させるなんてことありえないでしょう?」
「Sさんにもそのことは強くいっておきますので。今回はなんとかわかってください。」
わかるもなにも、荷物運び込まれて住まれてしまってはどうしようもありません。N女史にしてみればともかく1つは埋めたということなんでしょうか?
「ともかく、契約書だけは一刻も早く交わさないとだめでしょう。契約書のひな型をメールで送ってください。明日、1番で速達でSさんに送りますから。」
「わかりました。すぐそうしますので。」
まるもりは電話を切って、肩を落としました。
そして恐ろしいことに気づきます。
「これって、その気になればキーボックスの番号を知っているSさんに全部の部屋乗っ取られる可能性もあるっていうことだよね.......。」