翌日、3月12日の土曜日もまるもりは出勤日だったので、渋滞などに巻き込まれることを想定して、少し早目に家を出ました。余震が絶え間なく続いており、妻と子供を残して出勤するのは少し心配でしたが、それは他の職員も同じことなので仕方ありません。
早めに出たのも幸いして、渋滞につかまることもなく、少し早目に職場につきました。
まるもりは同僚に話しかけます。
「おはよう。昨日は家の近くは停電で早朝になるまで電気が開通しなくって、大変だったよ。灯油ストーブがないものだから、暖房もぜんぜんつかえなくってさ....。」
同僚も答えます。
「ああ、こっちも本当に大変だったよ。うちも停電でさ、マンションの12階だからエレベーターはうごかないし、階段を上り下りしなくちゃいけなくて、結局、モーターで水も上げているから水道も止まってるし、ガスも使えないしでさ。今日は回復したからよかったけど、マンションはエレベーターが使えないともう空中の孤島だね。外に買い物にいくのも容易じゃなくてさ.....。」
「そうか、高層マンションは停電すると全部のインフラがダメになるんだ。それも怖いね.....。」
「いや、本当にまいったよ。でも東北の惨状にくらべれば可愛いもんだとはおもうけどさ.....。」
「でもマンションのその状態は実際になってみないと想像もつかないね。でも本当にびっくりだよな。M9.0なんて地震が日本でおこるなんて思わなかったよ......。」
色々な混乱はあるものの、やるべき仕事をこなさなくてはいけません。まるもりは同僚と共に仕事にとりかかります。ばたばたと業務をこなしている間もこまかい余震がつづきます。
午後の業務をこなしている間に、福島第一原発の一号機で爆発があったというニュースが流れます。
まだまるもりは、この事がより一層、事態が深刻化する過程の始まりであることを想像だにしていませんでした。