2014年05月22日

落札から物件明け渡し(22)



 ガソリンの品切れ状態、鉄道も間引き運転、輪番停電で停電時間を気にしながらの生活。(都内は輪番停電なかったようですね。埼玉はいざとなったら切り捨てられる地域なんだということはこの時、よくよく理解させていただきました。)日を追うごとに悪化する福島第一原発の惨状、それに輪をかけた放射能汚染。浄水場の水の汚染やホットスポットなど不安をあおる情報が錯綜していました。


 出入りの業者は家族を名古屋に疎開させたといいます。


「本当。えらい思い切ったね。」まるもりは彼に言いました。


「いや、うちの会社の連中は結構避難させてますよ。ガソリンはないわ、電車はうごかないわ。水から地面、大気まで汚染されているんですよ。4号機の使用済み核燃料が放出されたら関東がどうなるかもわからないらしいじゃないですか。本当に避難しなくちゃいけなくなったときは移動手段なんか無くなって、もう身動きとれなくなってますよ。自分は仕事と生活があるからこっちに残っていますけど、子供と家族はね.....。」


「そうなんだ。でもそうなったら日本自体がどうなってるかもわからないんじゃないかな。」


「15日すぎから海外への飛行機もほとんど満席らしいですよ。わかっている人は逃げ出しているんですよ。ぼくも名古屋のウィークリーマンション借りましたけど、西は避難の人たちでどこもいっぱいみたいですよ.....。」


「じゃあ、今更うごいてももうどうしようもないってことじゃん。なにかあったら僕は家族と埼玉で最後を迎えるしかないね。」


「いや、まるもりさん。ここ数日間でわかったでしょう。ここらへんはもう陸の孤島になってる。何かあったら交通手段はどこもキャパを超えてしまって逃げ出せないでしょう。ご家族だけでもいまのうちにかんがえたら?」


「まあ、考え方は人それぞれさ。自分は自分を信頼して仕事を回してくれるお客さんがここに来てくれるかぎりはここにいるさ。家族を逃がすだけの君ほどの甲斐性がないのが情けないところかもね。」


 そういってまるもりは自傷ぎみに彼に微笑みました。実際、彼の行動は間違っていません。最終的に自分と家族を守るのは自分自身です。でもまるもりは西へ自分が逃げる気は起きませんでした。


 こんなことが起こる直前に競売で物件を落として、この騒ぎで地震でどうなっているかも確認できない状態という笑うしかない現状もありましたが、仕事を投げ出して逃げなくてはならない状況とは思えなかったのです。(明らかになった当時の状況を詳細を見ると彼の選択も決して誤りではなかったとおもいますが...。)


 また妻が逃げたいといえば逃がしたでしょうが、妻も逃げることは考えていないようでした。妻としては障害のある下の娘を受け入れてくれている今の小学校やコミュニティーからまた新しいところで関係をつくっていくことの困難さを心配していたのかもしれません。


 そしてまだまるもりは、この国と社会を信じていたいと思っていたのかもしれません。



posted by まるもり at 21:14| Comment(0) | アパート経営奮闘記 | 更新情報をチェックする

2014年05月21日

落札から物件明け渡し(21)

 

 3月14日の月曜日、自宅は第2グループなので9時~13時ごろ、職場は第4グループなので13時50分~17時30分の計画停電の予定がたてられていました。奥さんは9時までに洗濯など終わらせようと朝から忙しそうです。子供たちを学校に送り出したらすぐ停電ではちょっとかわいそうだなと思いながら、まるもりも少し早目に家を出ます。


 停電になってしまうと仕事ができなくなってしまうので午後1時半までに今日の仕事を一段落つけなくてはいけません。14日は埼玉はほとんど電車が止まってしまっている状態であるので欠員もありましたができる限り時計とにらめっこしながら仕事をこなしていきます。


 昼くらいに同僚がまるもりに声をかけました。
「まるもり、また福島第一原発で爆発があったみたいだぞ。」


「えっ、またかい。また水素爆発なのか?」


「はっきりしないが、半径20km以内の屋内退避が呼びかけられているみたいだ。」


福島第一原発3号機で水素爆発、11人けが 投稿者 samthavasa

「うーん。大丈夫なのか....。まあ東京電力と政府を信じるしかないんだが.....。まあ、関東は大丈夫なんだろうけど......。」


「いずれにしてもちょっと不安ではあるがな....。まあ1時までもう少しだ、なんとか一段落つけないとな....。だが、物はこないし、人はいないしでなかなか厳しいな.....。」


 なんとか1時半までに一通りの仕事を一段落させ、パソコンの端末の電源をすべておとします。
 2時過ぎに一斉に照明を含めた電源がドンと落ちました。


「停電中は開店休業だな.....。」そういうとまるもりは椅子にもたれました。


 このあと、刻一刻と、原発事故の深刻さが明らかになってくるとはまだまるもりは想像だにしていませんでした。


 おまけですが、このころ、報道はされていませんでしたが、西への避難民で東京駅はあふれていたようです。

  ↓  この翌日の配信のニュース

<東日本大震災>東京駅にも避難者の列
毎日新聞 3月15日(火)19時34分配信

「もう、何を説明されても信じられない」。JR東京駅では、平日にもかかわらず、東海道新幹線の切符売り場に名古屋や大阪などへ避難する人々の列ができた。
家族全員でマスクを着け、小走りで改札口に向かう姿が目立った。

千葉県市川市の女性(31)は、長女(6)と長男(4)の手を引いて切符売り場に並んだ。16日には長女の卒園式が予定されている。「式の後まで待とうと思ったが、 朝のニュースを見て待てないと思って」。茨城県つくば市の女性(36)は、午前中に車で東京都内の夫の実家へ逃げ、その足で京都の実家に向かう途中といい、「小さな子の体内に蓄積されちゃうと困るから」と、4カ月になる乳児を抱きしめた。

この日朝、職場の仲間に声をかけ、みんなで避難を決めたというのは新宿区で飲食店を営む男性(30)。「手遅れにならないうちに東京から離れたくて」。 店のスタッフとその家族の20人ほどで「とにかく西へ向かう」という。

西日本へ向かうこの日午後の新幹線指定席はほぼすべて満席という。


 報道規制あってあまり大きくは報道されていませんでしたが結構すごかったみたいです。
 この時はそんなこととは夢にも思わず、まるもりは避難はかんがえていなかったですがね.....。


posted by まるもり at 20:51| Comment(0) | アパート経営奮闘記 | 更新情報をチェックする

2014年05月20日

落札から物件明け渡し(20)

 

 13日の日曜日には本当はU市の物件の状態を確認したかったのですが、高速も閉鎖され、道の状態がどうなっているかもわからない状況でU市に向かうのは危険と考えられ、地震での損傷の不安はあるもののU市へいくのはやめにしました。


 13日の段階でも埼玉は色々な物資が品切れの状態でしたが、ショッピングセンターなど回って水や電池など手に入りそうなものを購入しました。たまたま車のガソリンが切れかけていたのでこの日に給油して満タンにしておいたのは幸運でした。(地元の人は覚えていらっしゃるかもしれませんが、14日からいきなり埼玉県内のガソリンが枯渇するのです。この時は予想もしていなかったのですが.....。)


 夕方のニュースでは、福島第一原発と柏崎原発が稼働しないことから電気受給が逼迫することから計画的に輪番停電を行われることが報道されました。また、鉄道は山手線以外はほとんどストップすることも発表されました。


「おいおいなんかどんどん深刻化してきていないか?物流止まって、スーパーもコンビニも物がなくなっているのに、この上、鉄道までとまるのかい?しかも計画停電だって?」


「うちの地区は第2グループね。また停電すると大変ね。冷蔵庫の使い方とか洗濯の時間とか考えないと.......。まだガスが使えるからいいわよ。オール電化の家は電気とまると全部だめになるっていうから....。ちょっと前までオール電化にあこがれていたけどそんな憧れ飛んでいってしまったわ。」


「職場は第4グループか....。端末が使える時間とか考えて仕事を組まないと.....。停電の時は信号も全部消えるから外には出にくいな.....。」


「計画停電は結構長期化しそうね.....。こんな状態がいつまで続くのかしら....。」


「まあ、もう仕方ないだろう。これだけ電車が止まると職場まで来れない人が続出だろうな.....。」


 ため息をつきながらまるもりは明日の準備を始めました。

posted by まるもり at 22:19| Comment(0) | アパート経営奮闘記 | 更新情報をチェックする